多くのファンの声援を受け、母国・千葉大会で3度目の優勝。
年間総合優勝に僅か1ポイント届かなかったものの、ライバルと全力でぶつかり合い
100%満足のいく終わり方でシリーズ最後のレースは幕を閉じた。
9月7日(土)・8日(日)、レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ最後の大会となる千葉大会が千葉県立幕張海浜公園で開催された。
レッドブル・エアレースの最終戦が母国でおこなわれることについて「ドラマティックですよね。多くの方に集まっていただきレースに出場できることはパイロットとして幸せ。」と話す室屋は、自らの心身のコンディションだけでなく、機体の調整や操縦技術等、これらを総合的に高め、心技体を常に磨き続けてきた。
母国大会の約2週間前、Team FALKENは室屋の活動拠点である、ふくしまスカイパークに機体を運び入れ、テストフライトを実施していた。レッドブル・エアレースとして最後の大会ではあるものの、チームは普段通り100%の力を大会に向けて注ぐべく、淡々と準備を進め、万全の状態でレース会場に乗り込んだ。
予選前日におこなわれたフリープラクティス1では、56.937秒(ノーペナルティ)を記録しトップと1.571秒差で6位、続くフリープラクティス2では56.672秒(ペナルティ+1秒/ Crossing The Track Limit Line)でトップと1.403秒差で5位を記録した。
2本のフライトを通じて様々なラインをテストし、おおよそのベストなラインを見つけた室屋は「テストは順調。明日はパワーを上げて全開でフライトすればタイムが出ると思う。今日まででできる限りの準備はおこなった。あとはベストを尽くしていいフライトをおこなうだけ。」とコメントした。
翌日におこなわれたフリープラクティス3ではクリーンなフライトでトップと0.317秒差の56.409秒(ノーペナルティ) で3位に。
続けておこなわれた予選は連続して2回のフライトをおこない、良いほうのタイムが結果として反映されることになる。
1回目の予選フライトは突如吹いた風の影響によるパイロンヒットを避けるため機体がブレて57.570秒(ノーペナルティ)を記録。2回目は計測システムのトラブルにより、スタート時に0.5秒ほどのロスをして58.050秒(ノーペナルティ)でフィニッシュ。
年間総合ランキング3位につけ、熾烈なワールドチャンピオンシップ争いを繰り広げる室屋にとって、予選ポイントは非常に重要であるが、予選を5位で終え、悔しくもポイントの獲得には至らなかった。
迎えた決勝当日。台風の影響で予定よりも大幅に時間を繰り上げて大会を開催することとなった。
Round of 14ではHeat1でベン・マーフィー選手(英国)と対戦。先攻でフライトしたベン・マーフィー選手は57.897秒(ノーペナルティ)を記録。上空待機中だった後攻の室屋は無線でそのタイムを聞き“1秒近く余裕がある”と判断し、限界まで攻めるよりも安定したフライトをすることを選んだ。その結果57.912秒(ノーペナルティ)を記録し、ベン・マーフィー選手に0.015秒差で敗退。まさかの展開に天を仰いだ。
その後チームは、ライバルたちが展開するRound of 14の残り12本のフライトを息を呑みながら見守った。幸い室屋を上回るタイムを記録する敗者がいなかったため、室屋がファステスト・ルーザー枠でRound of 8に進出することが決定。次はフランソワ・ルボット選手(フランス)と対戦する事となった。
Round of 8で室屋は極限までプッシュしたフライトで57.895秒を記録。対戦相手のフランソワ・ルボット選手はプレッシャーを感じたのか、2つのペナルティを記録し、1:02.963秒でゴール。室屋は最終ステージへ駒を進めた。
Final 4では1走目のピート・マクロード選手(カナダ)がペナルティを連発し1:04:028秒でゴール。2走目の室屋は再びベストなフライトを披露し58.630秒(ノーペナルティ)を記録。この時点で千葉大会での表彰台が確定した。続くカービー・チャンブリス選手(米国)が59.601秒(ノーペナルティ)、最後にフライトしたマット・ホール選手(オーストラリア)が1:00052秒(ノーペナルティ)でゴール。2位に0.971秒もの差をつけ、圧倒的な速さでTeam FALKENが優勝、25ポイントを獲得した。
大きなプレッシャーがかかり、勝つことが難しいと言われる母国大会で3度目の優勝。絶対王者と呼ばれたポール・ボノム以来の快挙を達成した。
2019年シーズンのワールドチャンピオンをかけた今大会。
年間総合1位だったマルティン・ソンカ選手は千葉大会で予選1位・決勝12位であったことから年間総合3位に沈み、千葉大会の結果をもって、僅か1ポイント差で室屋が2位、マット・ホール選手が年間総合優勝を手にした。
2019年シーズン、悔しくも総合優勝に届かなかったが、4戦中3戦で優勝を果たした室屋は「準備できる事は全ておこない、良きライバルと最後の最後まで全力でぶつかり合えたことで、非常にすっきりと終われた。100%満足のいく終わり方だった。」と話した。
また、常に応援し続けてくれた多くの方々に「皆様のご支援のおかげで、レッドブル・エアレース最終戦・千葉大会で優勝することができました。今日のRound of 14の勝ち上がりは、まさに応援いただいた皆の“気”が起こした奇跡でした。2009年のデビューから8シーズン・全54戦。自分の力を100%出し切れた事、何も思い残す事なくエアレースパイロットを終えられる事、幸せの極みです。多くの多くの支えを受けて46歳の現在まで競技者として生活させていただいている事に改めて感謝の1日でした。心より感謝、ありがとうございました!」とコメントした。
レッドブル・エアレースは今大会をもって終了となるが、レースへの参戦を通じて、目標に向かって取り組んだプロセスに室屋は強い想いを持っている。今後の室屋の活動・取り組みにぜひご注目いただきたい。
Red Bull Air Race World Championship 2019 最終戦 千葉大会 決勝レポート(公式サイト)
https://airrace.redbull.com/ja/news/qianyerace-reportxiaoyantedimekukutsutarasutoresu