レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは、クロアチア・ロヴィニに舞台を移し、5月30日、31日、第3戦が開催された。
トレーニングフライトから好調を維持してきた室屋は、予選7番目で飛行し、その時点でトップとなる54:305をマーク。ポール・ボノムにわずか0.039秒差で、予選1位の座は譲ったものの、自己ベストとなる予選2位を獲得した。
室屋自身の好調に加え、日本戦から導入したEDGE 540 V3のパフォーマンスが発揮された予選結果となった。
室屋は「千葉では新機体を用意したけどあまり調整する時間が無かった。こちらに来てからその時間ができたので、調整もできたしエンジンにも手を加えることができた。まだすることは多くあるけど、飛行そのものは自信を持って、安定したものにするよう心掛けている。」と、レーストラックでのフライトを重ね、新機体の調整が確実に進んでいることを語った。
翌日、決勝日。Round of 14。
予選2位をマークした室屋の対戦相手は、開幕戦で表彰台を獲得している予選13位のピート・マクロード。
先に飛んだマクロードは、それまでの最速タイムとなる54:091を叩き出し、室屋に大きなプレッシャーを与えた。
室屋のフライト。序盤からプッシュを続け、各セクションで、マクロードを上回るタイムをマークするも、終盤にパイロンヒットでペナルティ。クロアチア戦を10位で終えた。
室屋は、「あと少しでロヴィニの最速タイムが記録できました。ピート(マクロード)がかなりプッシュしていたので、僕もプッシュしなければならない状況でしたが、ゲート10の進入角度を間違えてしまいました。新しい機体は徐々に良くなってきています。このまま調整を続けていかなければなりません」と語る。
パイロット、機体をコンディションが上がってきていることは間違いなく、上位チームからも警戒されマークされてきている。これまでのシーズンとは異なるステージでの戦いが行われているという、確かな手応えを感じている。
レースは、ハンネス・アルヒが、2位のマルティン・ソンカに史上最僅差0.148秒で優勝を飾った。チャンピオンシップ争いは、アルヒがこの勝利で名乗りを上げた中、ここまで3戦連続で安定した結果を出してきたマット・ホールがポール・ボノムとポイント数で並び、首位に立っている。
今シーズンはこれまで3戦いずれも海上に設置されたレーストラックで行われ、風の強さや向きが頻繁に変わる難しいコンディションだったが、今回パイロットたちを悩ませていたのは風では無く気温の高さだった。気温上昇はエンジンにとって一番の大敵と言ってもよく、決勝日の7月5日(日)には気温が30度台後半まで上昇して各チーム対応に苦慮することとなった。
そんななか、日本の室屋義秀はこの第4戦から導入した新しいクーリング(エンジン冷却)システム がうまく機能し、トレーニングセッションから好調なフライトを持続。予選はマット・ホール(オーストラリ ア)に次ぐ2位につけた。室屋はこれで2戦連続の予選2位。「今のマットに100%で飛ばれたら、 追いつくのは難しい」と予選1位のホールには一目置きつつも、「現時点で考えられるベストに近い タイムが出ています。トレーニングセッションからずっとフライトは安定しているので、あまり心配する 要素はないと思います」と、翌日のラウンド・オブ・14以降へ向けて、自信を口にしていた。
ところが、ラウンド・オブ・14で予選13位のマティアス・ドルダラー(ドイツ)と対戦した室屋は、1分2 秒279でドルダラーに0.207秒遅れ、敗れる結果となる。このタイムはラウンド・オブ・14全体 でも6番目に過ぎない。トレーニングセッション以来、常に上位のタイムを記録していた室屋にしては不本意な記録だっただけに、やはり原因は折からの気温上昇かと思われたが、レース後に室屋が明かした原因は意外なものだった。「(気温上昇で)全体にタイムが伸びないのは分かっていました。そこに問題はなかったのですが、離陸前にコンピューターのシステムが全部ダウンしてしまい、 結果的に手探りの状態で飛ぶことになってしまったことが予選との一番の違いです」。室屋の機体には、新しく取り入れたタブレットタイプのコンピューターが搭載され、例えばGの計算を瞬時に行って画面に表示する ことによってパイロットがオーバーGを避けるなどの対応ができるようになっている。つまり、パイロットの感覚だけに頼らざるをえない部分をコンピューターがサポートしているわけだ。
室屋の前に飛んだ2名の選手が最後のバーティカルターン(13番ゲート)でオーバーGで失格となっており、感覚のみに頼る室屋は慎重にならざるをえず、また前回の決勝でパイロンヒットで敗れていたことで確実なラインで飛行した結果、タイムを落とし、残念ながら僅差で敗れた。
この結果、室屋はまさかの2戦連続ラウンド・オブ・14敗退(最終順位は9位)に終わった。予選 2位という成績から考えれば、もどかしい展開が続いているが、室屋は悔しそうな表情を浮かべながらも「クロアチアの第3戦では予選1本目は失敗して、2本目はうまくいき、今回の予選では 1本目から完全にうまくいって、2本目はさらに攻めてどこまでいけるかテストもすることができました。 そういう意味では、一歩ずつ前進しています。トレーニングと予選でのタイムが良く、上位に行けそうなだけに悔しいですが、新機体を導入し、様々な改良を進めるなかではいろいろな問題が出てくるという事態は起こりうることです。今回はシステムトラブルがありましたが、全体としてはいい改良ができていると思っています」と、前向きに語った。
レース会場のアスコット競馬場は、イギリス競馬の歴史において中心的役割を果たしてきた、言わばイギリスの伝統と文化が感じられる会場だが、今回のレースでは、皮肉なことに天候の面でも“イギリスらしさ”に見舞われた。当初、8月13日に全パイロットがアスコット競馬場にフライインするはずだったが、雨天のため中止に。翌14日には雨雲の合間を縫ってフライインこそしたものの、その後予定されていたトレーニングセッションは降雨が激しく中止となり、結局、パイロットたちは一度もレーストラックを飛ぶことなく、予選日を迎えなければならなくなった(トレーニングセッションは予選日の1回のみ)。
ようやく雨が上がり、時折日も差した予選日の15日は、それでもまだ風が冷たく、肌寒く感じられる気象条件だったが、エンジンが性能を発揮するのに大敵の条件である高温を避ける意味では、レース機にとってはむしろ好都合だった。
実際、現在の総合順位で上位につける実力者たちは、次々に好タイムを叩き出した。そんななか、室屋は1分7秒864のタイムで予選5位。第3、4戦がいずれも予選2位だったのに比べれば順位を落とす結果にはなったが、今回の予選で1分8秒を切ったパイロットは5名しかおらず、室屋本人も「順位は5位でしたが、内容としても飛んだ感触としても悪くありませんでした」と振り返る上々のフライトだった。この結果、室屋は翌日のラウンド・オブ・14で、前回のブダペストに続いてマティアス・ドルダラー(ドイツ)との対戦が決定。「リベンジになるのでいいですね。マティアスを倒して次に進みたいです」と笑顔で話し、上位進出に意欲を見せた。
こうして迎えた16日のレースデイ。室屋はまずラウンド・オブ・14で、先に飛んだドルダラーのタイムを1秒以上も上回る圧倒的な差を見せつけて有言実行の勝利。見事にリベンジを果たし、千葉での第2戦以来となるラウンド・オブ・8に進出。勢いに乗る室屋はラウンド・オブ・8でも、予選4位のピーター・ベゼネイ(ハンガリー)に快勝。今レースでの自己最高タイムとなる1分6秒706を記録する会心のフライトを見せ、昨年の第2戦(ロヴィニ)以来となるファイナル4進出を果たした。
週末を通じて冷静なフライトに徹してきた室屋だったが、今シーズン初のファイナル4進出で勝利へのプレッシャーがかかったためか、6番ゲートでインコレクトレベル(ゲートを水平に通過せず)となり初のペナルティをとられ、タイムが2秒加算されたことで念願の表彰台がまたも遠のいたかに思われた。ところが、その後に飛んだニコラス・イワノフ(フランス)、マット・ホール(オーストラリア)がともにペナルティを一度ずつ犯し、勝負は波乱の展開に。3人が飛び終わったところで室屋はホールに次ぐ2位につけ、この時点で室屋の3位以内が確定となった。
最後のポール・ボノム(英国)がノーペナルティーで圧巻のフライトを見せ。最終的に、室屋は自己最高成績に並ぶ3位でレースを終え、2度目の表彰台に立つことができた。ここ2戦は、予選で上位につけながら最終順位に結びつかないもどかしいレースが続いていた室屋だったが、上位を争える力をつけていることをあらためて証明した形となる。およそ1年半ぶりに歓喜のシャンパンファイトを味わった室屋は次のようにコメントした。
「千葉での第2戦から新型機を導入し、時間がないなか、この半年近くは詰めに詰めて準備をしてきました。その成果が出せてよかったです。表彰台に立つ準備はできていたので、同じ表彰台でも去年(第2戦での3位)とは大きく意味が違います。とはいえ、まだいろいろなテストを続けている最中で、今回も機体には不具合がたくさん出ると予想していましたし、実はいろいろ起きてもいました。1番になる(優勝する)にはまだひと山越えなければなりませんし、安定して勝ち続けるにはもう一歩前に進むことが必要だと思っています。これからは最低限ファイナル4に残れるくらいの結果を保ちながら、いろいろなことに挑戦していきたい。常に他のチームも機体の改良を進めているので、できればポールやマットに追いつくように、少なくとも置いていかれないようにしなければいけません。チームとしては今まで通りやり続けていくだけですが、今回表彰台というひとつの結果が出たことでこれから気分よく進んでいけると思います」
今回のレースで3位に入った室屋は7ポイントを獲得し11位から順位を3つ上げて8位に上昇。混戦の4位争いに加わった。
レースの会場となったのはF1オーストリアGPが開かれることで知られるサーキット場レッドブル・リンク。牧場が広がる山のふもとののどかな環境にあるサーキット場でのレースは、その一方で常に変わりやすい“山の天気”に翻弄され、大波乱となった。
9月4日のトレーニングセッションは無事に行われたものの、予選が予定されていた翌5日は強い雨に見舞われ、12時すぎに予選のキャンセルが決定。2009年のエアレースデビューから今季が4シーズン目となる室屋義秀(チームファルケン)にとっても、予選のキャンセルは初めての経験だったが、ある程度事前に予想できたことでもあり、落ち着いた様子で次のように語った。
「あくまでも予選が行われる前提で朝からいつものルーティーンで準備をしていましたが、昼にキャンセルが決まったので、精神的には一度レース・モードをオフにしたという感じです。前日(9月4日)のトレーニングセッションで今回改良した箇所にうまく機能していないところがあって元に戻す作業をしたので、そこを予選のフライトでチェックしたかったのですが、この天気では仕方がありません。飛びたいと思っても雨はやみませんからね」
予選キャンセルを受け、翌日のラウンド・オブ・14は、第5戦終了時点での年間総合順位をもとに対戦カードが決定。これにより室屋は、今季第4戦から3戦連続同ラウンドでマティアス・ドルダラー(ドイツ)と対戦。レースデイの6日は、空に多少の雲はあるものの、幸いにして朝から好天に恵まれ、これなら室屋も雨の心配をすることなく、好条件でレースが行えるかに思われたが、室屋は前日に続き、またも変わりやすい“山の天気”に泣かされることに。全7組のヒート方式で行われるラウンド・オブ・14。開始直後は暖かな日差しに照らされていたレーストラックに突然風が吹き始めたのは、最初の2組が終わったころだった。
最初は木々を揺らす程度だった風も瞬く間に強さを増し、会場内のあちこちにある看板類を倒すほどに。当然、その影響はレーストラック内にも及び、真っすぐに立っていたはずのパイロンもまた、大きく揺れ動き出し、室屋の直前にフライトしたハンネス・アルヒ(オーストリア)が何とスタートゲートにパイロンヒット。アルヒの直後に飛んだ室屋もまた、「離陸直前に風が吹いて気流が荒れていましたが、離陸してからさらに風が強くなりました」と振り返る厳しい条件下でのフライトを強いられることに。
「予定通りのラインだと4 番ゲートから5 番ゲートにうまく入れない」と判断した室屋は、急きょライン取りの変更を決断。「大きく回り込むようにラインを変更しました」が、その分5 番ゲートに入る角度がきつくなり、パイロンヒットこそしなかったもののインコレクトレベル(ゲートを水平に通過せず)のペナルティを犯し、2 秒が加算され、室屋のタイムは1 分00 秒736。後攻の優位性を生かしたドルダラーは慎重なフライトに徹したことで、ランタイムでは室屋に1 秒以上遅れた59 秒811 だったが、ノーペナルティで切り抜け、室屋はラウンド・オブ・8への進出を逃した。
このラウンド・オブ・14 では、室屋の後に飛んだマット・ホール(オーストラリア)もパイロンヒット、同じくポール・ボノム(イギリス)もインコレクトレベルにより、それぞれペナルティタイムが加算。彼らのような実力者でさえ珍しくペナルティを犯したという事実が、いかに厳しいコンディションでのフライトが行われていたかを物語っている。
強風という思わぬ敵に上位進出を阻まれた室屋は、レース終了後、悔しさを露わにしながら、「ラインを変えたことで、5 番ゲートでのバンク(機体の傾き)がギリギリになることは分かっていましたが、フライト自体はうまくいったと思います。ビデオで確認しても、正直、ペナルティはなかったのではないかと思うくらいです。ラインの変更はエンジンをかける直前に決めましたが、そうした変更は滅多にあることではありません。レースの最中にこれほど大きくコンディションが変わることはありませんから。ただ、もちろん風の影響はありましたが、それをコントロールするのがパイロットの役割です。ペナルティにしても誰がどう見ても疑惑を持たれないように飛び続けなければいけません。(風がなかった)最初に飛んだ人と、(風が強くなった)最後に飛んだ人では2 秒くらいタイムに差がありますし、運の要素も大きくはらんでいるレースになりましたが、そうした様々な要素が絡んでくるなかで、どう安定した戦いをしていくかはこれからの大きな課題です」と語った。
レッドブル・エアレース フォートワース・テキサス大会レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップの2015年シーズン第7戦が行われたアメリカ・テキサス州のテキサス・モーター・スピードウェイは連日30度を超える暑さに見舞われたが、今シーズン、改良を重ねてきたエンジンの冷却システムも順調に作動し、土曜日の予選で室屋は55秒610の好タイムを記録。その直後に飛んだマティアス・ドルダラー(ドイツ)がこれを0.026秒上回り、室屋はわずかの差で自身初となる予選トップの座を逃したが、「計算通りの良い出来でした。1本目は真ん中くらいの順位まで行けるように手堅く飛んでタイムを出し、2本目はリスクを負ってギリギリまで攻めた結果、シミュレーション通りの良いタイムが出ました。どこのチームも最適のラインを見つけるのに苦労していると思いますが、うちのチームはそのへんをかなり準備してきたので、アドバンテージがあるのではないかと思います」と笑顔で語った。
今季の室屋はこれまでに予選2位に2度(第3、4戦)つけながら、いずれも最終結果はラウンド・オブ・14敗退に終わるという経験をしているが、「過去2回は、予選2位にもかかわらずラウンド・オブ・14で強い相手と当たるというアンラッキーがありましたから」と気にする様子は見せず、「今回は順当に行けばファイナル4まで勝ち上がれると思います」と、強い自信を伺わせた。そして、室屋は翌27日のレースデイで、その言葉通りの結果を見せる。
まずラウンド・オブ・14では、予選13位のピーター・ベゼネイ(ハンガリー)と対戦し、先に飛んだベゼネイがインコレクトレベル(ゲートを水平に通過せず)を犯してペナルティタイム2秒を加算されたのを聞くや、安全なライン取りに変更。「ラインを変えすぎて不安定になってしまいました」と苦笑いを浮かべるフライトになりながらも、結果は1秒以上の差を残す快勝。
続くラウンド・オブ・8では、予選8位から勝ち上がってきたニコラス・イワノフ(フランス)と対戦。ここでもまた、先に飛んだイワノフが4秒のペナルティタイムを加算(スタートスピード超過とパイロンヒット)された後とあって、無理のない落ち着いたフライトを披露し、ノーペナルティで飛び切り、3秒近い差で楽々と勝利。ラウンド・オブ・14とラウンド・オブ・8は、いずれのフライトもタイム的には物足りないものではあったが、室屋は「それは予選で良いポジション(2位)にいなければできないことですから」と話し、まったく不安を感じさせなかった。それどころか、余裕を残して勝ち上がれたからこそ蓄えられたパワーを爆発させるべく、ファイナル4で勝負に出る。
ファイナル4では最初に飛んだマルティン・ソンカ(チェコ)がインコレクトレベルに加え、パイロンヒットによる5秒のペナルティタイムを加算される結果に終わったことで、室屋にとっては今季2度目の表彰台がグッと近づいた。そして2番目のポール・ボノム(イギリス)が55秒285と、風が強くなったラウンド・オブ・8以降では誰も出せなかった55秒台のタイムを記録し、さすがの強さを見せつけた後、いよいよ室屋の出番となる。
「ポールが良いタイムを出したので、目一杯プッシュしていきました」と振り返る室屋は、勝負をかけて果敢に攻めのフライトに打って出た。実際、中間(1周目)ラップではボノムのタイムにわずか0.033秒差と肉薄。しかし、その中間ラップ計測地点である第8ゲート(2周目のスタートゲート)で痛恨のパイロンヒット。この瞬間、悲願の初優勝の夢はついえたが、それでも動揺することなく、残りのフイトをミスなくまとめた室屋はソンカのタイムを大きく上回り、この時点で2位。最後に飛ぶホールを残し、室屋の3位以上が確定。結局、ホールに抜かれはしたが、室屋は今季第5戦(アスコット)以来の3位となり、通算3度目の表彰台に立つとともに、1シーズンで2度の表彰台に立つという自身初の記録も作った。
予選2位から順当な勝ち上がりの末に手にした3位という結果は、室屋自身もさらに上を狙える手応えを得るものとなった。室屋は「一番になるにはもうひと山越えなければなりません」と、ポール、マットという2強のライバルの力を認めつつも「勝てるだけの材料が揃ってここまで良い形で来ているので、最終戦ラスベガスは勝ちに行きたい。ファイナル4で勝つのはハードルが高いですが、残り2週間で詰めていきたいです。」と初優勝に向けた意気込みを語った。
レース会場のアスコット競馬場は、イギリス競馬の歴史において中心的役割を果たしてきた、言わばイギリスの伝統と文化が感じられる会場だが、今回のレースでは、皮肉なことに天候の面でも“イギリスらしさ”に見舞われた。当初、8月13日に全パイロットがアスコット競馬場にフライインするはずだったが、雨天のため中止に。翌14日には雨雲の合間を縫ってフライインこそしたものの、その後予定されていたトレーニングセッションは降雨が激しく中止となり、結局、パイロットたちは一度もレーストラックを飛ぶことなく、予選日を迎えなければならなくなった(トレーニングセッションは予選日の1回のみ)。
ようやく雨が上がり、時折日も差した予選日の15日は、それでもまだ風が冷たく、肌寒く感じられる気象条件だったが、エンジンが性能を発揮するのに大敵の条件である高温を避ける意味では、レース機にとってはむしろ好都合だった。
実際、現在の総合順位で上位につける実力者たちは、次々に好タイムを叩き出した。そんななか、室屋は1分7秒864のタイムで予選5位。第3、4戦がいずれも予選2位だったのに比べれば順位を落とす結果にはなったが、今回の予選で1分8秒を切ったパイロットは5名しかおらず、室屋本人も「順位は5位でしたが、内容としても飛んだ感触としても悪くありませんでした」と振り返る上々のフライトだった。この結果、室屋は翌日のラウンド・オブ・14で、前回のブダペストに続いてマティアス・ドルダラー(ドイツ)との対戦が決定。「リベンジになるのでいいですね。マティアスを倒して次に進みたいです」と笑顔で話し、上位進出に意欲を見せた。
こうして迎えた16日のレースデイ。室屋はまずラウンド・オブ・14で、先に飛んだドルダラーのタイムを1秒以上も上回る圧倒的な差を見せつけて有言実行の勝利。見事にリベンジを果たし、千葉での第2戦以来となるラウンド・オブ・8に進出。勢いに乗る室屋はラウンド・オブ・8でも、予選4位のピーター・ベゼネイ(ハンガリー)に快勝。今レースでの自己最高タイムとなる1分6秒706を記録する会心のフライトを見せ、昨年の第2戦(ロヴィニ)以来となるファイナル4進出を果たした。
週末を通じて冷静なフライトに徹してきた室屋だったが、今シーズン初のファイナル4進出で勝利へのプレッシャーがかかったためか、6番ゲートでインコレクトレベル(ゲートを水平に通過せず)となり初のペナルティをとられ、タイムが2秒加算されたことで念願の表彰台がまたも遠のいたかに思われた。ところが、その後に飛んだニコラス・イワノフ(フランス)、マット・ホール(オーストラリア)がともにペナルティを一度ずつ犯し、勝負は波乱の展開に。3人が飛び終わったところで室屋はホールに次ぐ2位につけ、この時点で室屋の3位以内が確定となった。
最後のポール・ボノム(英国)がノーペナルティーで圧巻のフライトを見せ。最終的に、室屋は自己最高成績に並ぶ3位でレースを終え、2度目の表彰台に立つことができた。ここ2戦は、予選で上位につけながら最終順位に結びつかないもどかしいレースが続いていた室屋だったが、上位を争える力をつけていることをあらためて証明した形となる。およそ1年半ぶりに歓喜のシャンパンファイトを味わった室屋は次のようにコメントした。
「千葉での第2戦から新型機を導入し、時間がないなか、この半年近くは詰めに詰めて準備をしてきました。その成果が出せてよかったです。表彰台に立つ準備はできていたので、同じ表彰台でも去年(第2戦での3位)とは大きく意味が違います。とはいえ、まだいろいろなテストを続けている最中で、今回も機体には不具合がたくさん出ると予想していましたし、実はいろいろ起きてもいました。1番になる(優勝する)にはまだひと山越えなければなりませんし、安定して勝ち続けるにはもう一歩前に進むことが必要だと思っています。これからは最低限ファイナル4に残れるくらいの結果を保ちながら、いろいろなことに挑戦していきたい。常に他のチームも機体の改良を進めているので、できればポールやマットに追いつくように、少なくとも置いていかれないようにしなければいけません。チームとしては今まで通りやり続けていくだけですが、今回表彰台というひとつの結果が出たことでこれから気分よく進んでいけると思います」
今回のレースで3位に入った室屋は7ポイントを獲得し11位から順位を3つ上げて8位に上昇。混戦の4位争いに加わった。
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